中期経営計画・年度予算を策定する目的・メリット、経営計画の策定フローを解説!!
こんにちは、keijinhoです。
本記事では、以下の疑問に答えるために、中期経営計画・年度予算の策定フローについて、解説していきます。
・会社を創業したばかりで、何にどのくらい予算をかけていいのかわからない
・予算計画、中期経営計画が従業員に浸透せず、計画倒れになってしまう
・外部環境の影響があるから数年後のことなんて計画できない
・非上場企業でも予算計画・中期経営計画の必要性はあるのか
ぼくは、1部上場企業2社を経験し、現在ITベンチャー企業で経営企画・IPO実務担当を任されていますが、入社後、売上30億円→50億円以上、営業利益を4億円以上を出すことができました。
そこで、ぼくの師匠でもある、20年以上メガバンクに勤務し、事業会社のマザーズ上場と1部鞍替えを成功させた、現在1部上場企業のCFO直伝の「年度予算計画・中期経営計画の策定フロー」をお伝えします。
Contents
中期経営計画・年度予算を策定する目的・メリット
中期経営計画・年度予算を策定する目的
経営計画には、一般的に3年スパンで策定する「中期経営計画」と、1年スパンで策定する「年度予算(予算計画)」があります。
会社の利益は、売上から経費を引いて算出します。いくらの利益を達成したいか、この予想利益を達成するために、どのくらい売り上げればいいか、経費はいくらまでかなどを決めることが、計画策定です。
まず、中長期的に達成したい目標(中長期の事業計画)を策定し、これに基づいて、「いつまでに」「何を」「どのくらい」達成するか計画を立てます。Goal(最終目標)を設定し、それに辿り着くため中間目標をクリアしていくというイメージです。
そして、中期経営計画に基づいて、今年度の売上・利益目標を立てます。この売上目標を達成するために設備投資や人員の増員が必要であれば、これらも検討して予算の中に組み込んでいきます。
また、年度予算を立てた後は、売上数字を達成するまで突っ走るだけというのはNGで予実管理を行う必要があります。目標値とのズレがあれば、仮説を立て、施策を打ち、実行し、振り返る、といった、戦略的なPDCAサイクルを回していく一連の行動が予算管理です。
立てた予算と実際の達成値を月次でや週次でチェックし、社員にフィードバックして、現状のペースでいいとか、経費を削減すべきとか、具体的な指示に落とし込んで舵取りを行う必要があります。
(予実管理の手法については、別記事で解説したいと思います。)
中期経営計画・年度予算を策定するメリット
メリット①:会社の現状や課題の把握が容易になる
経営計画を策定するプロセスにおいて、自社と競合他社の市場シェアや市場伸び率といった、外部環境を数字で把握できるとともに、従業員数、従業員の年齢・性別・適性といった人的リソース、自社の販売力や開発力、組織風土といった内部環境・経営資源の現状や課題を再認識できます。
外部環境、経営資源を客観的に把握することで、精度の高い経営戦略や経営計画が策定できるようになります。
メリット②:やるべきことが明確になる
例えば「売上100億円から5年後に売上を300億円にする」という中期経営計画を策定する場合、「営業材料がどれくらい必要なのか?」「従業員はどれくらい必要か?」「新規事業の必要か?」など、具体的な数字に落とし込んで考えることになります。
達成すべき数値が明確になることで、達成に向けた具体的なアクションプランが立てられるため、現場への落とし込みがよりスムーズになります。
メリット③:社員に「考える」癖がつく
計画策定をトップダウンだけではなく、多くの社員を巻き込んでいくボトムアップで行うことによって、経営幹部から現場レベルまで考えるようになり創意工夫が生まれるようになります。
その結果、従業員ひとりひとりに考える習慣が身につき、現場に落とし込んだ計画が正しい方向でPDCAを回していけるようになります。
経営計画策定フロー
ここからは、経営計画の策定手順について解説していきます。
経営計画は、達成すべき数値目標を策定するためのものですが、数値目標の基礎となるのは、やはり財務データです。
経営企画は、企業の過去の実績を的確に捉え、未来を適切に描き、企業の存続・成長・発展を図るという重要性を担っています。なので、そうしたミッションを強く認識し、過去の実績数値から財務分析を行い、経営層に対し、企業価値、株主価値から逆算して戦略や計画を提言していければ、付加価値はさらに上がっていきます。
手順①:外部環境を分析する
まずは、外部環境、すなわち自社を取り巻く状況を分析します。
競合他社の状況(戦略・シェア・価格・品質・機能・技術力など)や、市場の成長性、お客様の傾向などです。
手順②:自社の現状を把握する
次に、自社の現状を踏まえ、自社の強み・弱みを客観的に分析します。
財務データはもちろんですが、従業員数や構成比率といった人的リソース、自社の販売力や開発力、成長性、組織文化なども分析すべきです。どのような経営リソースがあり、強みや足りないものを明確にします。
外部環境、内部環境の把握にあたり、以下の3つを行うことをオススメします。
・「SWOT分析」(会社を、「強み(Strength)」「弱み( Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の四つの軸から評価する手法)

・「5フォース分析」(業界の収益性を決める五つの 競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法)

・「3C分析」(ビジネスのプレイヤーを市場(顧客:Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)と3つに分類し分析する方法)

ドラッガーも「企業の目的は顧客創造である」と言っています。特に3C分析の中で、「自社の顧客は誰か、顧客満足度を高めるために何をすれば良いか?」を徹底的に追求することが重要です。
手順③:経営戦略を策定する(経営理念を明確にする)
経営理念・経営ビジョンの策定
経営理念は、各企業が何のために活動を行うのかを指したものです。
つまり、企業の基本となる価値観や信条、使命を表現したものです。
また、「経営ビジョン」とは、各企業が「経営理念」をベースに、 事業を通じて将来的に成し遂げたいことや成し遂げたい状態を指したものです。
経営理念が不変のものに対して、経営ビジョンは、時間軸を入れて策定し、時代に合わせて変えていくものです。
経営目標の策定
経営ビジョンが経営理念実現のための青写真だとすると、経営目標はさらにそれを具体化するための、マイルストーンといえます。
例えば、「(現状売上60億円の場合)3年後に売上を100億円にする」、「3年後にインド進出し、アジア圏の売上を10億円まで伸ばす」といった具体的な数値目標がこれにあたります。
事業ドメインの再設定
自社のポジショニングともいえます。
ポジショニングとは、マーケットで独自のポジションを築き、ターゲットとなる顧客にユニークな差別化イメージを持って貰う活動です。顧客に「このサービスって他と比較して良いよね」とか「この商品を使うと他の商品が物足りなくなる」と思って頂けるようにすることです。どのように「競合優位性」を築くかを考えることであり、会社として採るべき戦略につながると言えます。
ベンチャー企業にとっては大企業や先行企業に少ない経営資源で勝つ上で、どのようなポジショニングを取るかは極めて重要です。
手順④:経営計画を策定する(数値目標に対するアクションプランを決める)
これらを踏まえた上で、経営計画を具体的な数値を踏まえ、数値目標を達成するための損益計画を、アクションプランとともに策定します。
損益計画
損益計画は、売上、売上原価の予算やアクションプランだけではなく、販売費及び一般管理費まで策定します。これは、全社だけでなく、各事業部単位で行うべきです。
また、直接的な費用を各事業部に配布するだけではなく、会社全体でかかる間接費の配賦基準を決めて間接費を含めた事業部損益を意識することは重要です。この時、トップダウンで決めるのではなく、事業部単位で協議し納得した上で決めると、より事業部損益の意識向上につながります。
資金計画、人員計画、設備投資計画、予想BS・CF
また、想定する売上計画の達成に対し、必要となる、資金、人員確保、設備投資などについても、計画を立てます。拡大のチャンスが到来した際に、リソース不足によってチャンスを喪失するのを予め防止するためです。さらに、予想BS・CFまで着手できれば、さらに精度が高まります。もちろん将来の状況の変化に応じて対応が変わるのは当然ですが、事前に考えて計画を立てておく事が重要です。

経営計画策定のポイント
策定の際には過去3年の実績データをもとに策定します。売上計画は商品・顧客単位で、販管費などのコストは勘定科目単位で行うのはもちろんですが、一歩進んで支払先ごとに行うのがベターです。
大事なのは、トップダウンだけではなく、事業部からの意見吸い上げボトムアップとのを融合を図ることです。そのためにも、経営企画部門をはじめ、コーポレート部門が調整を図ること、経営陣と事業部の双方が納得する計画を策定するよう打ち合わせを行うよう取り計らうことです。
まとめ
経営計画の策定フロー・手順について理解いただけましたでしょうか。
ただ、経営計画は策定して終わりではありません。期中において、計画通りに実施できているか、できていなければどのように立て直しを図るかを、常に模索し続けていく必要があります。
そこで、次回以降で、策定した経営計画に対して、予実管理の手法をお伝えしていきますので、そちらも併せてお読みいただければと思います。
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。