Sports tech スタートアップが実行したシリーズD資金調達後記!

Carrer

こんにちは、keijinhoです。

ラグビー日本代表やサッカー日本代表、プロスポーツチーム対し、コンディショニング管理ツール「One Tap Sports」を提供しているスポーツテック企業『ユーフォリア』で、経営企画・財務・IPO準備責任者をしています。

2022年に続き、2023年もスタートアップの資金調達環境が冷え込んでいる中、2023年9-10月にシリーズD資金調達を実行しました。

今回のラウンドにいち早く名乗りを上げ文字通りリードしてくださった既存投資家様、投資フェーズ外にも関わらず追加出資いただいた既存投資家の皆様、新たに投資決定いただいた新規投資家の皆様には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。まずはしっかりとIPOまで導き、恩返しをしたいと思います。

ぼく自身は、今回のシリーズDでは、採用内定直後から資金調達資料の作成(準備フェーズ①)やvaluationや目標調達額決定プロセス(準備フェーズ②)、既存投資家交渉に同席させてもらい、入社後は、CFOと二人三脚で新規投資家周りと、クロージングを担当するなど、ほぼ全般に関わらせていただきました。

スタートアップの資金調達環境の冷え込みや、シリーズDというレイターステージの難しさのなかで、たくさんの学びや気づき、反省点がありましたので、一般的な資金調達のステップを解説するとともに、今回のシリーズD(リリースされている情報を除き、投資家の社数や具体名等は控えさせていただきます)で感じたことやポイントを残してしていこうと思います。

自分自身の今後のために整理すると共に、同じような境遇の方に少しでもお役に立てれば(どの程度お役に立てるかはわかりませんが笑)幸いです。

入社100日の動きはこちら⇩
スタートアップの経営企画・財務・IPO準備責任者としての100日!

Contents

1-①:準備フェーズ①(スケジューリング・投資家リスト・事業計画策定)

資金調達を行う上で最初にやるべきこととしては、「スケジューリング」「投資家候補リストアップ」「事業計画策定」です。

ファイナンススケジュール

まず、資金調達の準備ですが、クロージング(着金や登記)から逆算し、半年以上前からスタートすることが望ましいと思います。心理的に余裕がない状況で進めると、安易な判断をしてしまうおそれがあるため、特に赤字の場合は、バーンレートとランウェイを意識しさらに前倒しでリードタイムを確保すべきです。

シリーズDスケジュールの概要(と、ぼくの入社前後の関わり)はこんな感じでした。

  • (PJスタート)3月。8~9月ころのクローズを目指して、CFOを中心に事業計画を作成開始し、投資家へのタッピングをスタートしたとのこと
  • (採用面接と内定)5月。CFO面接、代表面接。面接後、事業構造のイメージや、面接時に感じた課題感を伝えるためにパワポを作成・提出。
  • (既存投資家周り)5月。既存投資家周りをスタート。内定後、ファイナンス資料のブラッシュアップに継続的に関与、CFOの投資家周りに可能な限り同席
  • (新規投資家周り)6月。取締役会で予算(事業計画)の最終承認。新規投資家周りをスタート。CFOの投資家周りに可能な限り同席
  • (リード確定)7月。リード投資家(既存株主)の出資内定
  • (入社)8月。入社。投資家周りと投資家質問・DD対応。リード投資家の投資委員会で出資決定。
  • (入社後)9月。リード投資家の投資実行。既存株主複数社の投資委員会で条件付き出資決定。
  • (入社後)10月。新規投資家複数社の出資決定。フォロー投資家の投資実行・クローズ

今回のシリーズDは、3月に事業計画作成を開始、10月にクローズと、結果的に約7ヶ月のPJとなりました(ぼくは5月の面接・内定後からシリーズDに関与させてもらいました)。

ユーフォリアはテック企業のIPOの例に漏れず、今期も赤字の事業計画を書いています。また、単一事業ではなく複数事業を並行して行っているコンパウンドスタートアップであり、人材や開発への投資が先行していて、キャッシュマネジメントが特に重要であることはイメージしていただけるかと思います。

そういう意味で、目標調達額の箇所で詳述しますが、2023年もスタートアップの資金調達環境が冷え込んでいる中、10月までにベースラインとしていた目標調達額をエクイティのみで獲得できたのは、ランウェイとスケジュールを意識した活動があったからで、入社直後にプロジェクトマネジメントの重要性を強く感じた出来事でもありました。

投資家候補リストアップ

既存投資家がいる場合には、既存投資家の追加投資があるかないかでラウンドの難易度が大きく変わってくるため、ラウンドの初期段階でコミュニケーションを取っておくのがセオリーです。ラウンドの初期段階で既存投資家から追加投資のコミットを引き出し、それを持って新規投資家への当たっていければ良い流れで活動できます。

そのため、投資家候補リスト作成やコンタクトについては、以下の重みづけで行うのがいいと感じています。
 ①既存株主
 ②前回ラウンドがある場合にはコンタクトがあった投資家
 ③新規投資家

新規投資家のリストアップやコンタクトについては、VCが掲載されているWeb Siteをチェックしていくのが、一般的かと思います。
VC会員 – 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会

また、個人的には、スタートアップの資金調達業務の効率化をしてくれるスマートラウンドというサービスがオススメです。投資家候補リストがあって、メールではなく、最初からチャット形式でコミュニケーションが取れるようになっているので便利です。
smartround

そのほか、投資家とのコンタクトの手法については、X(旧Twitter)などのSNSでキャピタリストが発信していたりするので、そのポスト内容や雰囲気、相性などを見てみるのもアリかと思いますし、直接連絡してみるのも手かと思います。

個人的には、紹介ベースが圧倒的に話を聞いてもらえる可能性が高いと思っています。既存投資家に紹介していただいたり、既存投資家にリストを共有して繋がりを見つけてもらう等、動いていただくイメージです。(投資家さんの多方面の繋がりはホント凄いなと思います。)

また、投資家候補リストを作成する際は、①投資ジャンル、②投資フェーズ、③自社の競合先への出資等をチェックしておきましょう。③は、接触時に自社の情報だけ与えることにならないよう注意すべきかと思います。

ユーフォリアのシリーズDでは、既存株主や前回ラウンドまでにコンタクトがあった投資家に優先的にあたり調達可能性を見極めつつ、新規投資家へコンタクトを行いました。既存株主や前回までにコンタクトがあった投資家で30弱、新規投資家で20弱、計50弱の投資家とコンタクトしたかと思います。

新規投資家へのアタックについては、既存投資家からの紹介や経営陣の繋がりからコンタクトを取ったのがほとんどで、最終的にご出資いただけるまでに魅力を伝えきれずに終わってしまいましたが、やはり紹介からのコンタクトは比較的話を聞いてもらいやすかったという印象でした。

そのため、既存株主からの追加出資交渉はもちろん、追加出資は難しくても横の繋がりで新規投資家候補を紹介いただくということを忘れず怠らずにやるということも重要だと思います。

事業計画策定

資金調達で一番重要なのは確固たる事業計画を策定することだと思っています。

事業計画策定については、既存投資家がいるのであれば最大限その力を借りましょう。積極的に壁打ちしてもらうことでブラッシュアップできますし、投資家目線で刺さりそうなポイントや逆に突っ込まれそうなポイントを資料に落とし込んでおきたいところです。

また、事業計画は、①PLは、売上や各段階利益だけでなく、KPIから積み上げて作成している方がいいですし、②PLだけでなく、三表連動でBSとCFも作成しておく方がより望ましいと思っています。

この点、ユーフォリアの事業計画のたたき台は、ほぼすべての既存投資家から指摘されたことですが、PLのみの計画でかつKPIが的確に落とし込めていませんでした。

特に、①については、KPIが見えにくくなっていたこと(さらにフェーズが進むことによって今後は取締役会等でもKPIをモニタリングしていく必要があると思い)や、過去の事業計画では実績との乖離が発生していて何が足りていないのかが分かりにくかったことから、売上構造やKPIとの連動を明確にして推移を追えるように、KPIから積み上げで作り直しました。

また、②については、業績だけでなく三表連動の方が状態をより的確に把握できることや、上述のように赤字企業でキャッシュフロー予測が最重要事項なので、三表連動に組み替えて、営業キャッシュフローと財務状況が連動して将来予測ができるように修正しました。

どこまで作りこむかはフェーズによる部分も大きいかと思いますが、『投資家目線で作ること』『事業の状況によって必要なものが変わること』の重要性を認識した形になりました。

1-②:準備フェーズ②(Valuation・調達目標額・タッピング)

事業計画策定に目途がついたら、「valuation」「目標調達額」「投資家タッピング」です。

Valuation

Valuationといっても、絶対基準と相対基準があり、前者(Pre-money、Post-moneyがいくらだったか)については、Initialや登記簿謄本で把握できますし、後者については、トラクションや事業計画、マルチプルを参考に算出されるもので、資金調達時の最大の関心事の1つかと思います。

まず、自社で考える評価、つまり目標調達額と望ましい稀薄化率に紐づく希望的なValuationについてはすぐに出せるかと思います。一方で、投資家候補は、投資実行時のValuationが、将来上場した時の時価総額で得られるリターンから逆算して極端な割高感がないかを見ているため、市場における評価については、自社で考える希望的評価よりも低いことがほとんどです。

そのため、自社で考える評価と市場における評価にはズレがありますし、あんまり欲張りすぎると投資家がついてくれずに充分な増資ができないため、事業を伸ばすことができず、結果として将来にダウンラウンドせざるを得ない状況が待っているので、このGapをどう調整するかだと思います。

そういう意味で、希望的なValuationを持つことのほかに、類似上場会社のマルチプルやトラクションや合理的な計画指標等の根拠に基づく(第三者に対しても一定の説得力を有する)Fair Value を算出しておくことも不可欠だと思います。

IPOに向け主幹事証券候補が決まっているのであれば、事業計画を共有したうえで「現在の市況で上場したらどれくらいの時価総額が付くか?」「コンプスはどこか?」などの情報を貰い、ディスカッションをしておきましょう。将来の算出のプレができるので主幹事候補にとってもメリットがあるはずです。

また、既存株主に、どれくらいのValuationなら出資頂けそうか、理由や背景とともに聞いてみるのも効果的です。加えて、類似上場会社のIR(Investor Relations)資料も、Equity Storyのヒントになるかと思います。

ユーフォリアのValuationについては、第三者機関による株価算定のほか、主幹事証券候補によるvaluationに関する参考資料をベースとし、リード投資家との間で固めることができたので、幸いにもダウンラウンドせずに調達ができました。残念ながら守秘義務や投資家との関係上、詳細にお伝えすることはできませんが、シリーズDにご参加頂いた投資家の皆様からは適切な評価をいただけたと思っています。

目標調達額の決定

Valuationがざっくり決まれば、次は調達額の検討です。

これは事業計画とも密接に関連しますし、Cap Table Simulationも必要不可欠です。⇧で導き出されるValuationに対して目標調達額が過大な場合には、当然ですが大幅にダイリューションすることになり、次回の調達時に支障を来たします。一方で、最悪なのは目標調達額を過少に見積もると、次の資金調達サイクルが早まるため、事業に影響が出てしまいます。

そういう意味で、ぼくは以下のポイントを抑えるようにしています。

  • 数年後に目標としている売上高はいくらで、そのために何にいくら投資が必要なのか
  • 現在のキャッシュポジションからその投資をすると、いつ資金ショートするのか
  • 想定Valuationに対して、調達額は現実的か
  • 今回の資金調達でダイリューションはどこまで許容できるのか
  • IPO時点で経営株主には何%持っていて欲しいのか

その他、株式(Equtiy)と借入(Debt)の構成も悩ましいですし、初期のタイミングで決め切れるものではないので、Cap Table Simulation をしながら、調達レンジに応じて投資プランを複数持っておくのがいいかと思います。

ユーフォリアでは、事業計画上はそう遠くない将来に単月黒字に転換すること、IPOスケジュールがオンスケで行けば上場ファイナンスが期待できること、市況によっては上場時期を見直す可能性があることを視野に入れながら、ザっと以下のplanを計画していていました。

  • plan A:オンスケで行った場合にIPOファイナンスまでに最低限必要な資金を調達
  • plan B:上場時期を見直しても支障がない程度に資金余力を確保
  • plan C:ダウンラウンドしてでもIPOファイナンスまでに最低限必要な資金を確保

結果として、plan A と B の中間あたりに落ち着くことができましたが、スタートアップファイナンスへの関与は、個社の状況や市況感を踏まえて、事業計画とCap Table の絶妙なバランス感や、どうコントロールするか、経験やセンスが問われる判断だと感じました。

投資家候補タッピング

valuation、目標調達額がおおむね固まったら、投資家候補にタッピングをスタートします。

タッピング時に投資家候補に対して必ず聞くべきこととしては、以下かと思います。
 ①リードインベスターになれるかとその条件
 ②出資サイズ
 ③ファンド期限
 ④株主になっていただいた時の支援内容
 ⑤投資委員会等、意思決定のプロセスとスケジュール

ユーフォリアの場合、シリーズDということで既存株主様も多かったことから、事業計画やvaluation・目標調達額を決めるよりも先に動いていました(これはあまり参考にはならないかなと思います)。

NDAの締結に備えてドラフトの準備をしておいたり、DDに必要となる投資パッケージをあらかじめ用意しておいて、面談後すぐに展開できるように準備しておく方が多少は印象が良いかなと思います。

2:交渉フェーズ

リード投資家との交渉

リード投資家の定義もいろいろありますが、①Valuation含めその資金調達ラウンドの条件を決めること、②そのラウンドおける最大額を拠出すること、かと思います(①だけのケースもあるかとは思いますが)。

ラウンドが成功するかどうかについては、既存株主による追加投資があるとないとでは大きく左右される旨を上述しましたが、これにプラスして、リード投資家が早期に決まるかどうかも重要です。そのため、リード投資家交渉については、⇧のタッピングで特に相性や感触が良さそうな投資家をリード候補とし、優先的にDD・交渉を進めましょう。

また、市況感にもよりますが、安全策を取る意味で、複数のリード候補と同時にコミュニケーションを取っておくのも大事です。リードのみというスタンスの投資家候補も当然存在しますが、フォローに回ってもらう可能性も含めて交渉しておくことで、選択肢が増えるかと思います。

フォロー投資家との交渉については、タッピングの際に「リードが決まっていれば投資検討する」と言われるケースは多いです。リード投資家とタームシートレベルで合意しておけば、フォロー投資家候補には、基本的にはリード投資家とのタームシートの条件に乗るか反るかということになるかと思います。そういう意味で、フォロー投資家については、ラウンドの状況等を定期的に情報提供し関係を暖め続けながら、リード候補に投資決定してもらうよう全力で臨む感じになるかと思います。

DD対応については、質問に的確かつスピーディーに回答していくと担当キャピタリストの信頼を獲得できます。事業担当者にしか回答できないような細かいレベルの質問や資料要請が来ますので、スムーズに対応するためには社内の協力体制は必須です。事業担当側は、事業と並行して対応することになり相応の負担が発生しますので、関係構築も重要です。することと守秘義務についてインプットしておくと良いでしょう。

投資検討が進んでいくと、リファレンス面談があります。主に、①サービスのユーザー、②既存投資家との面談を要請されることが多いです。①は慣れていない方がほとんどかと思いますので、可能な限りで質問項目を入手したり、面談の趣旨や内容について、事前に打ち合わせしておかないと、思わぬところで足元をすくわれます。

銀行との交渉

Debt(借入)を行う場合は、エクイティ調達の確度が上がったタイミングでスタートするのが良いと思います。

借入は一定期間経過後に金利を付けて返済することが前提ですので、黒字である事業を有している(もしくは黒字化の蓋然性が高い)、返済時期に資金余力があると判断してもらえる等、その返済確度が問われます。そういう意味で、Equity(株式)による資金調達の確度が上がってから銀行にお声掛けすれば、投資により事業が黒字化する、リスクバッファがあるという判断になり借入しやすくなると思います。

新規の金融機関の場合、まずは短期(1年等)で借り入れて関係を構築し、リファイナンス前提で資金融通ができる状況を作っておくのが理想です。

また、資金調達が厳しい市況になってベンチャーデットの利用も増えているようです。ベンチャーデッドは、転換社債や新株予約権付融資などが含まれ、融資を受けると同時に、自社の株式をあらかじめ定められた価格で購入できる新株予約権(ストックオプション、ワラント)を付与する手法ですので、選択肢の1つとして押さえておくのがいいと思います。
https://coralcap.co/2022/10/venture-debt/

投資家交渉・DDの所感

本ラウンドをキーワードで表すとすると、『レイター(シリーズD)』『市況が悪い』です。

基本的にレイターシリーズの場合、調達額が数十億円を超えてくるため、リード投資家は上場企業にも投資しているクロスオーバー投資家のようにチケットサイズが数十億円規模の投資家に限られてきますが、これに加え、繰り返しで恐縮ですが、本ラウンドは市況感が悪化し、スタートアップへの投資判断がより厳しくなっていると感じました(https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2023h1)。

ただ、幸いにも、既存株主の1社から本ラウンドの比較的早い段階で追加投資と本ラウンドのリードを決定いただけました。リード投資家候補に優先的かつ時間を割いて対応できたのはかなり大きかったかと思います。

また、本ラウンドでは、フォロー投資家の意思決定はかなり慎重になっていると感じました。市場がイケイケの時機だと、リード投資家が確定すれば、フォロー投資家の方々も残りの金額の出資についてスピーディーに意思決定されますが、市場が冷え込んでいる現状においては、サイズが小さかったり、条件が付いたり、意思決定そのものに慎重にならざるを得ないのもやむを得ないとも思います。

実際に、既存株主からも1度は断られましたが、再交渉と担当キャピタリストのご尽力により、本ラウンドのエクイティ総額で㊙億円を超えることという条件付きでの内定をいただく等、大逆転劇があったりと、当社にとっては嬉しい出来事ではありましたが、厳しさを実感した瞬間でした。

さらに、本ラウンドでは、複数の新規投資家にも入っていただいていますが、本ラウンドはレイターかつ市況が悪いことが影響してか純粋なVCからは投資が見送られ、いずれも複数のCVCや事業会社から資本業務提携の形でした。当社としても、事業拡大を図っているフェーズなので、フェーズによる相性もあるのかと考えさせられました。

加えて、当社では、Debt調達にも動いておりますが、この辺りは別記事で紹介したいと思います。上場企業勤務時代に、スタートアップへ投資する側として、転換社債による投資を行い、投資先の支援と新株予約権の行使を行った経験があったので、今回は投資される側ですが、この経験は役に立っているなと思います。

3:最終フェーズ

最終フェーズは、『契約』『登記』『プレスリリース』です。

契約書は一般的に、①株主間契約書、②投資契約書、③総数引受契約書、の3点かと思います。ここまで進むと、臨時株主総会や臨時取締役会の開催等、細かい実務対応が必要となり、ミスがあるとクロージングに影響が出るため、前半までとは異なるプレッシャーと闘うことになるかと思います(とはいえ、 ここまでくると、嬉しい悲鳴です)。

株主間契約書については、既存株主・新規株主全員の捺印が必要となるので、外部株主が多いと捺印ロジも結構大変です。プレスリリースについては関係各所にコメントを貰いつつ、メディアとのリレーションも発生するので慌ただしくなりますし、着金確認や登記手続きも必要となります。

総括 ~結局は行動量

ここまでいろいろ書いてきましたが、ピカピカのユニコーン企業は別として、資金調達活動というのはとにかく断られ続けることだと思っています(もちろんぼく自身の実力不足も多分にあります)。

断られるのが続くと、減り続けるキャッシュポジションがめちゃくちゃ不安を覚えますし、この状況から早く脱するためにvaluationを下げるという判断も致し方なかったりします。

ただ、Valuationは交渉で上下することはありますが、容易に下げていいというものではないかなと。ビジョンや事業価値を考慮して自分たちでFair Valueだと信じる値を算出してると思いますので、そのビジョンや事業価値に共感してくれる投資家を信じて動くしかないと思います。

で、そのためにどうするかですが、結局は行動量しかないかなと。反省や改善も質を上げるためには必要ですが、場数を踏む方が一番の改善策に繋がりますし、コンバージョンから逆算して行動し続けるしかないと思ってやっています。

一般的な資金調達のステップや、今回のシリーズDで感じたことやポイントを解説してきました。ファイナンスの1つの方法として参考にしていただければ幸いです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!